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守を探しに行った王子と従者の話*11

出口とともに首飾りがかき消え、
白く光る蔦のようなものが二人の身体に巻き付き始めました。
「約束通り一人置いていって貰おう」
「……選べるのか?」
首飾りの言葉に王子は驚きましたが、
ユーリを置いていくのはもちろん嫌でしたし、自分が残るというと当然ユーリが反対しました。



「私はもう死んだのです、あなたが帰るのが筋でしょう」
「でもユーリが助けなきゃ私が死んでいたのだし」
二人が言い争いの様相を呈していると、
「早くおし。さもないと二人とも地上に戻れなくしてしまうよ」
首飾りはそう言って黙りました。

*

首飾りが怒ったのかとアルファたちは思いましたが、実は地上では地上でいざこざが起きていたのでした。
「許容範囲の狭い奴だ」
首飾りをつまみ上げたのはナギでした。
「おや、懐かしい顔ではないか。随分小さくなったものだな」
首飾りが呟きました。
ナギがまだ大きな存在だった頃、
首飾りがまだ首飾りでなかった頃、
二人は知り合いだったようです。
しかしナギは片眉を上げただけで、それについてはあまり興味を示しませんでした。
「運んでやったのだから少しは間違いを許してやっても良いだろうに」
ナギの言葉に首飾りは、
「駄目だ。二人帰したら秩序が」
勿体ぶって答えましたが、いきなりナギに振るわれて慌てました。

「何をする」
「道を繋いでやるのだ」
白蛇はにっこりと笑いました。
「力を貸してもらうぞ」



無理に力を引き出されて、首飾りは抵抗するもうまくいきません。
何がなんでも力を貸さないことも出来るには出来ましたが、少し考えた首飾りは、ナギの好きなようにさせることにました。
やっぱり自分が造った子供たちが可愛かったのかもしれません。

「ただしやはり完全なまま二人を帰してはならないのだよ」
幾分哀れみを込めた声で首飾りは言いました。
「あの子どもたちに約束をさせなければならぬ」

*

そんなわけで、
黄泉に留まる二人のもとに、また首飾りの声が響いてきました。
「譲歩だ、譲歩しよう。二人で帰ることを許そう。しかし、それぞれ半分ずつ置いておゆき」
どういうことか分からない二人は思わずスプラッタな想像をしましたが、
首飾りが言うのは物質的な半分ではありませんでした。

「そなたらが地上に持ち帰ることが出来るのはその身体に備わるものだけだ。
王子アルファと従者ユーリは死ぬ。
今までの地位と居場所を捨てて、二人でお帰り。」
アルファとユーリは黙りました。
そして二人顔を見合わせて頷きました。
地上への出口が再び繋がり、二人は手を繋いで歩きだしました。



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