story

守を探しに行った王子と従者の話*12

帰ってきた二人を迎えたナギは、これで良いのかと問いました。
「良いんだよ」
アルファとユーリは頷きました。
「どちらかがいない世界に帰っても意味がないんだ」
いまや二人で一人分の彼らは、なんとなくお互いの気持ちまで分かるようでした。

「力を引っ張り出してもあの首飾り、細かいことばかり言いおって」
ナギが不満を溢すのを、親切な白蛇だなあと思いながら聞いていたアルファたちでしたが、この言葉には驚いて尋ねました。
「では首飾りが自主的に私たちを助けたのではなく、あなたが首飾りを使ったのか」
「そうだ。疲れた」
大袈裟なため息を吐くナギに、王都から来た二人は顔を見合わせました。
古いふるい生き物が二人の前にいました。



*

アルファとユーリはナギを連れて帰りました。
王宮の人々は白蛇を見てある程度驚いたようでしたが、
追い返したりはしませんでした。
柔らかい緑の中に白蛇のための社が建てられました。

ナギは最初に望まれたような宝を抑えるだけのものではなく、
宝を使えるほどの力の持ち主でしたが、
おとなしく親切な性格だったため、王族たちも安心して首飾りを任せることができたのです。
彼は宝の守になり、王国が滅びるまでそれは続きました。



さて、王子は。
王子はある日、
「ちょっと出掛けてくる」
と言いました。
「ユーリも連れていくね」
とも言いました。


そしてふたりで歩いていったまま、戻ってきませんでした。


守を連れて戻ってきた二人だというのに、
人々はなぜかあっという間にアルファという王子がいたことも、
ユーリという従者がいたことも忘れてしまいました。

二人がどこへ行ったかは誰も知りません。
王さまの力が届かないところまで行ったのか、意外にも城下町で暮らしているのか。
東の一族に合流していたり、
もしかすると出掛けてすぐに死んでしまったのかもしれません。

それでもひとつ言えそうなことは、どこに行っても二人は一緒にいるということです。
例え桃色の花が咲く黄泉の国であっても。
多分いつまでもいつまでも、二人一緒なのです。



fin.

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