story

守を探しに行った王子と従者の話*3

「音はこれからしていたみたいだ」
王子が掲げると、首飾りは若干不満そうな音を立てました。
「王子、首飾りの言葉が聞こえるようになったということですか」
「言葉じゃないけど」
従者が何か不安そうな顔を向けてくるので、
王子は少し困りました。
「でもさっきの何やらすごいものには強いみたいだよ」

「巨大な蛇のような形に見えましたね」
危険な動物がいるという話は聞いていなかった二人ですが、
昔この地域に大蛇がいたという話を思い出し、
便宜上先ほどの怪物を大蛇と呼ぶことにしました。



「あれに気をつけながら古い一族を探さなきゃならないね」
王子が首飾りをしまいこんだところで、
「その必要はないぞ」
知らない声がしました。

*

気付けばアルファとユーリは周りを囲まれていました。
頭に植物模様の布を巻き、弓矢を番えた人々が、森の中から見ています。
不思議なことには、そのどれもが女の人のようでした。
「王国から来た王子と従者だな」
髪を結い上げたどうやら一番偉いらしい女が言いました。
「我々のところへ来て頂こう」



一難去ってまた一難というか、
王子と従者は捕まってしまいました。

*

「首飾りは東に行ったのよ」
厚いカーテンの中で、おっとりとした女性の声がいいました。
「知っているよ、東は良い土地だ!」
楽しげな、中性的な声がそれに応えました。
最近では宝の部屋に祀られて引きこもりきりの宝たちは、退屈していたのです。
「あの辺の森につくりぬしを祀っていた一族がいたでしょう?」
「いたね」
おとなしい一族だったから戦が一回で済んだ、
と中性的な声はどこかうっとりした声で言いました。
「首飾りはね、最近変わったっていうそこの長に興味を持っていたのよ」
「何かぴんとくるものがあったというわけか」
「変人が好きだから、あの方は」
「それで誰とも喋らなくなったのかな?」
「そうかもしれないわね」



「最近の王族の力の弱りようは甚だしいからなあ」
「あなたも外に出たくなったの?」
つまらなそうに言う中性的な声に、女性の声がくすくすと笑いました。
「わたしのことを十分に扱えるものなら、そもそも王族である必要なんてどこにもないからね」
「それは私も同じ」
宝たちは、ひどく退屈していました。
それでもある程度王族の味方をしていました。
「だけど首飾りと違って、私たちはそれなりに王族に思い入れがあるものね」
「首飾りだって王族に思い入れはあるよ」
三つのうちのひとつ、首飾りを除いては。
「逆の方向にだけどね」
くすくすと笑いさざめく宝二つは、首飾りの新しい主に思いを馳せました。

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