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守を探しに行った王子と従者の話*8

「王子……」
ユーリが言いかけたところで、アルファが突然彼女を引きよせました。
ユーリはぎょっとして文句を言いかけましたが、
アルファが思いの外真剣な顔をしていたために口をつぐみます。
「私はユーリと帰ることにした」
王子は呆れて成り行きを見守っていた頭領達に向かって言い放ちました。

「そんな勝手が許されると思うのか」
頭領の言葉にアルファはにやりと笑いました。
「首飾りが許す」



片腕で彼の従者を抱えたままもう片方の腕をふりかぶると、
王子は物言う首飾りを敵に向かって投げつけました。

*

弾こうとする部下たちをすり抜け、
首飾りは生き物のように頭領のところまでたどり着きます。
そして、頭領にだけ聞こえる声で言いました。
「随分と働いてくれたようではないか」
頭領は訳がわからず、表情には出さないながらもひどく焦り始めました。
「だが王族に関してはまだだ。まだ時は来ておらぬ」
さらさらと美しい音を立てながら、歌うように首飾りは言いました。
「あまり目立つことをされては困るのだよ―――私の欠片よ」



見ていた王子達には、頭領から白い紋様が染み出たように感じられました。
首飾りは頭領から何かを吸い取ると、少しだけ輝きを増したようでした。
頭領と部下たちは崩れ落ち、そのまま眠ってしまいました。

*

「どういうことです?」
「話せば長くなるんだけど」アルファの説明に、ユーリは納得したように頷きました。
「私が出てきた頃は、もっと人々は穏やかでした」
頭領の扇動がなくなり、これからはまた昔の一族に戻るかもしれません。
「故郷に戻りたくなった?」
王子の問いに、従者は少し困ったように言いました。
「いいえ……正直、もう故郷という感じがあまりしないのです。
王子の従者を長くやりすぎましたね」

王子はそれを受けて嬉しそうにしましたが、急に神妙な顔になって言いました。
「だけど、真面目な話、もう従者でなくて良いんだよ」
不思議そうな顔をするユーリに、アルファは少しだけ気になっていたことを言います。
「私は本当は王子ではないのだから。」
アルファの言葉に、ユーリはきょとんとしました。
そして口を開いたかと思うと―――
そのままアルファを突き倒しました。



驚いたアルファが声を出す暇もなく、
地下牢の奥から迫ってきていた大蛇がユーリに覆い被さりました。

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