story

守を探しに行った王子と従者の話

二人の王さまから何代も何代も、
国を継いだ王さまたちは様々な人々と交わってきました。
王さまの存在は世界に溶け込みましたが、同時に特別なちからも失われてゆきました。
王さまの国を支えてきた宝に選ばれる子どもも減ってきました。
そしてあるとき、とうとう誰の呼びかけにも応えない宝が出てきました。
ものいう首飾りです。

ものいう首飾りはもともと酷く偏屈でした。
比較的簡単に人間に心をゆるしたたまごや剣と違い、
契約したもの以外には意識されることをゆるさず、契約したもの自身とすら殆ど交わりませんでした。
真っ白いその色は何者をも拒否するようでした。




困った王族は宥めたり脅したりを試みましたが、どうしようもなくなって占い師に泣きつきました。
「そもそもあなた達王族はあの首飾りに好かれてないんですよ」
占い師爆弾発言。
王族のちからが弱まった今、もはや首飾りはいうことを聞くつもりはなかったのです。

*

そもそも宝が必要なのか、王族は議論しました。
宝が役に立つのは、大抵国の内外に敵がいるときです。
最初の二王は剣で敵を断ち、首飾りで人々の心をつなぎました。たまごによって国は安全に守られ、ひとつに包み込まれました。
しかし今世界は王国によってひとつになりました。内部の敵も外部の敵もおらず、時折起こる小競り合い以外はこれといった争いも無い安定した世の中です。
宝なしでも十分にやっていけるのではないか―――彼らは考えました。



「ならばいいでしょう」
占い師は結論を聞いて言いました。
「しかし、宝を放っておくのは危険です。力ある者が現れてこれを手にすれば、王家が滅ぼされかねません。管理だけはしっかりしておくべきです」
そこで宝の守を探すことになりました。必要なのは、宝を扱うことが出来なくとも、その力が他に渡らず、暴走もしないように押さえつけることが出来る生き物です。

「王都の東の山の中に、古いふるい生き物がいます」
占い師は水晶玉を見つめ、眼を細めて言いました。
「彼ならば宝を押さえる力を持っていましょう」

*

そんなわけで、二人の若者が守探しに向かうことになりました。
王子アルファと従者のユーリです。



王子アルファは日嗣の御子でした。
母親似の可愛らしい顔をした明るい少年でしたが、
父王の血を継いでいないのではないかと噂の曰くつきの王子です。
加えて三つの宝の何れにも選ばれなかったことで、
少々軽く見られている感がありました。
従者ユーリはそんな王子の2歳上の幼馴染で、彼とは兄弟のように一緒に育ちました。
普段は王宮の警備をしている冷静な若者です。
特に行く予定も無かったのですが、王子のたっての頼みということで同行することになりました。

噂の日嗣の御子が碌な伴もつけずに遠地へ向かわされるというので、
王都の人々は各々の推測を飛び交わせました。
王さまはわざと王子を危険な場所にやって新しい日嗣の御子を立てるつもりだとか、
手柄を立てさせて息子に関する噂を一掃するための愛の鞭なのだ、とか。

当の本人は気楽な様子で、
「久しぶりに王宮の外に出られたし、ユーリと一緒だと気安いし、私は結構嬉しいな!」
と笑いました。

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